最近話題の「PPAP」の商標問題について
みなさんは「PPAP」という言葉をご存知でしょうか。 「PPAP」は、芸人「ピコ太郎」(古坂大魔王)氏による歌のタイトルです。ペン-パイナップル-アップル-ペン(Pen-Pineapple-Apple-Pen)それぞれの頭文字をくっつけたもので、米国のジャスティン・ビーバーがこの歌を面白いとする投稿をtwitterに呟いたことで、世界的に知れ渡ることになりました。 最近、この「PPAP」が、古坂大魔王氏が所属するエイベックス・グループHD社より先に、第三者によって商標登録出願されたことがニュースやワイドショーで話題になっています。 「PPAP」を出願したのは、ベストライセンス社という大阪の会社です。 ベストライセンス社は、出願印紙代を支払わずに大量の商標を出願して、却下される前に、分割出願して延命を図り、正当に商標登録しようとする者の邪魔になったり、特許庁の業務を圧迫したりしていることで、業界では以前から有名な会社です。 私どもも、お客様から商標登録のご依頼をいただき、調査を行っている中で、度々、ベストライセンス社の出願が検索されるため、その存在と手法を数年前から把握していました。 無駄なことを大量に行っているように見えますが、そのビジネスモデルは、出願した商標を使用している者にライセンス契約を持ち込み、利益を得るというものです。大量の出願は、そのための布石です。 「PPAP」は、ベストライセンス社が2016年10月5日に出願しています。 エイベックス・グループHD社の出願日が10月14日で、ベストライセンス社の最初の出願から9日後と、一足違いだったようです。 おそらく、ベストライセンス社の出願の存在をエイベックス・グループHD社は知らなかったと推測されます。ベストライセンス社の出願が公開され、その存在を知ったときには驚いたのではないでしょうか。 「PPAP」はあまりに有名であるため、ベストライセンス社の出願は、仮に出願印紙代が支払われていても、特許庁の審査にて拒絶されるものと考えられます。 これは、商標法では、基本的に、先に出願した者を優先的に登録する先願主義を採っていますが、他人の有名な会社名,マーク,商品名,営業表示を無断で使うことによって、著名性にタダ乗りするような行為(フリーライド)を禁止しているためです。 しかし、これは本件のように、出願した商標が既に著名性を獲得している場合といった特例的なもので、単に以前から使用しているだけといった場合や、一部の業界ではメジャーでも、特許庁の審査官が知らないような商品やサービスを表す名称であれば、登録になる可能性があります。 一旦登録になっても、商標登録を取り消す手段(前号メルマガの知財講座「登録異議申立・無効審判について」をご参照ください。)はありますが、大変な労力が掛かりますし、取り消せない可能性もあります。 そうなれば、今まで使用していた屋号や商品名が使用できなくなり、また、パンフレットやチラシ、パッケージ、看板などは全て破棄などという事態にもなりかねません。 「PPAP」のように著名性を得た場合を除くと、以前から使用している商標を、今後も安心して使用し続けられるようにするためには、やはり、いち早く商標登録しておくことが大事であることには変わりありません。 本件に関して、ご心配な点、ご不明な点等ございましたら、どうぞ気軽にお問い合わせください。